「FIRE 最強の早期リタイア術」を読みました。
この本は、FIRE(経済的自由)を達成し、働かずに一年中世界を回って暮らしている中国出身のカナダ移住者女性の体験談と、その投資法を紹介した本です。
FIREを実現したい私としては参考になる部分も多かったので、主に感想と書かれている内容について紹介と考察をしていこうと思います。
本紹介
著者は中国からカナダに移住した女性です。
小さい頃は中国のゴミ捨て場でおもちゃをあつめたり、あまりの貧乏生活で、草の根や土すら食べないと生きていけない時代に生まれました。
運良く父がカナダに移住するチャンスを得、著者もカナダに移住する事となりました。
そこで資産の重要さ、中国で身についた欠乏マインドで資産を形成。
30代にして完全リタイアを達成。
1年のほとんどを旅行して過ごすという、何という羨ましい生活をしていらっしゃいます。
本書の良い点は、著者が株で一発当てたのではなく、元から投資家というわけでもなく、不動産投資家や社長でもない。
一般社員でありながらFIREを達成させた点です。
一般社員で30代でFIREを達成させるのは並大抵では無いことですが、どうやって著者がFIREを達成したのか、資産はどうやって運用しているのか。
そういった知識が書かれています。
POTスコアで職業は選べ
著者が初めてカナダに入った時、父からもらったコーラの味に感動し、そのままコーラの缶を宝物とするようになります。
そんな彼女ですから、お金に対する欠乏マインドはとても高く、一切無駄をせず、なんとしてでもお金を稼ぐという精神がとても高くなっていきます。
大学に入る際、彼女は自分の好きな作家では食っていけないと考え、POTスコアを計算し、最も効率の良い学部へと進学します。
[box05 title=”POTスコアとは”]
大学の授業代と就職した際の最低賃金をどれぐらい上回るかを計算したスコア
大学年間費用*4=大学総費用
給料の中央値ー最低賃金=差額
差額÷大学総費用=POTスコア
POTスコアが高いほど効率が良い
[/box05]
彼女の付きたい仕事は作家やライターでしたが、ライティングはPOTスコアが0.2。
それに対してコンピュータエンジニアは2.81と10倍ものスコアの差がありました。
このスコアを参考に、著者はあまり好きではないものの、コンピュータが学べる大学を専攻します。
私自身、学生時分は好きな事を仕事にしたいと考えていました。
今でも好きなことを仕事にしたいと思っています。
ですが、好きなことを仕事にした人ほど仕事を辞める確率が高いという研究結果があります。
また本著者は
「10年もあれば人の好みは変わるもの。最初こそ付きたい思っていた仕事であっても、10年後も好きであり続ける保証は全く無い」
と言っています。
これはまさにその通りで、一体誰が10年先の自分の価値観が分かるでしょうか?
好きだった仕事が嫌いになるかもしれない。別の趣味を見つけるかもしれない。
自分の将来は分かりません。
ですが、職業の年収であれば大体分かります。
給料というものはそう大きく変わるものでは有りません。
唯一ハッキリしていて、生活に必需品であり、あれば有るほど良い「お金」を仕事の選考に使うのは賢い方法です。
POSスコアで大学を選ぶというのは私にはあまり無かった発想だったので、勉強になりました。
ただまあ、もし10年前の自分に同じことを言って、10年前の自分が納得するかというと疑問ですけれどもね。
お金を最重要に考えた著者がやはり特性の高い女性だったように思います。
ポートフォリオの組み方
さて、ここからは著者がFIREを達成できる分だけの資金を30歳の内に集め終わり、実際にポートフォリオを組むときの話です。
インデックス投資において最も難しいのがその資産の取り崩し方です。
どのように取り崩していけば資産の目減りを減らし、一生の途中で資金が尽きるリスクを無くせるのか。
それはこのポートフォリオにかかっていると過言ではありません。
著者のポートフォリオはこのようになっています。
債権 | 40% |
---|---|
EAFE | 20% |
米国株 | 20% |
カナダ | 20% |
EAFEはヨーロッパ・オーストラリア・極東を投資するETFです。
つまり米国・カナダ・アフリカなど以外の全世界に投資するスタイルですね。
そこに債権を入れることで全体の動きをマイルドにしています。
カナダ株が多いのは著者の国籍がカナダ籍であるためです。
投資家はホームバイスによって自国の株を多く投資する傾向にあります。
そのため著者はカナダだけにならないよう、米国と各国に分散されたEAFEを購入することで全世界投資を行っています。
米国株の比率が低いのが特徴的ですね。
2010年頃~2020年の10年間米国経済は世界を独走していました。
本書の内容はリーマンショック前後の内容が書かれているので、今はこのポートフォリオから変わっている可能性もありますが、昨今の全世界投資は米国の比率が高くなる傾向があります。
そんな時に米国経済が暴落した時、米国の比率が高かった人は大損害を受けることでしょう。
その点このポートフォリオであれば米国は全体の20%でしかありません。(とはいえ最近は全世界同時に暴落するのであまり分散効果は薄いのかも知れませんが)
また債権の比率が40%あることで、米国株にフルインベストしている人より分散の効いた安全なポートフォリオと言えるでしょう。
参考にすべき暴落への対策
さて、こちらも本書において参考になった内容の一つです。
それは、インデックス投資における最大の難題。
【暴落時の対処方法】です。
高配当株と違い、インデックス投資は全体資産から決められた%分の資産を取り崩すことを想定しています。
例えば1億円の4%を毎年引き落としていたとした場合、毎年400万が手元に入ります。
ですが、暴落で50%下落し、資産が5000万になったとすると、手元に入るのは200万と半減します。
400万の資金で生活していたのが急に200万になるのです。
生活出来ない人も出てくるでしょう。
また資産が-5000万になっているのに、そこからさらに200万売却するというのはとてもストレスです。
必ずやってくる暴落をどう凌ぐのか。暴落の対策をインデックス投資家は問われます。
さて、著者の暴落への対策は
【現金クッションと利回りシールド】
というものです。
なんとなく想像が付くかと思いますが、内容としては、
「暴落は過去のデータから5年ほどで元値まで戻る。その期間を耐えられるだけの現金を用意しておく」
というものです。
例えば年間にかかる費用が400万だとしたら、400*5で2000万現金を用意しておこう。
というものですね。
2000万も現金貯められない!
と思われるかと思います。ですので、代わりに「利回りシールド」を用意しておくことで、定期的な収入を確保しておく。
というのが著者の言いたいことです。
利回りシールドについてもう少し説明すると、
利回りシールドとは、インデックス投資の資金の一部を、一時的に高配当株やREIT、社債など高配当が期待出来るものに移し替えておく。
というものです。
これにより、例えば配当で年間費用の200万円を賄えれば、用意しておく資産は200*5=1000万になります。
1000万も貯められない!という人は、暴落の危険性のある5年間だけ、インデックス投資と同じような種類の高配当ETFなどに資産をすげ替えるという方法もあります。
例えばVOOに投資しているのであればVYMに変える
AGGならLQDに変える。など
ボラティリティは高くなる傾向になりますが、これによって暴落時に生活できなくなるというリスクは軽減されます。
これを読んで、なるほどなーと思わされました。
私的には、インデックス投資で暴落が来た場合、回復するまで耐えるしか無いと考えていたのですが、高配当株にすげ替えて耐えるという方法もあるのかと参考になりました。
ただ今回のコロナショックを受けて、もし私が資産1億を持っていたとしても、その資金を高配当株に変えることが出来たと問われれば難しいと答えるでしょう。
そう考えた時、私が行っているインデックス投資と高配当投資のハイブリット投資は一定の効果が有るのではないか。そう思えます。
インデックス投資1本より効率は落ちますが、高配当投資も平行して行う事で、暴落時の生活資金確保に高配当株を当てにすることが出来ます。
このままハイブリット投資を続けていくのが私にとってはベストな投資方法であると考えています。
第18章「我が道を行け」
本書は参考になる部分が多かったですが、個人的に一番感銘を受けたのがこの最終章
「第18章 我が道を行け」です。
FIREを達成させるには3つの力のどれかが必要になります。3つの力とは
- ハスラー
- 投資
- オプティマイザー
この3つです。
この3つのうちどれか一つを突出させることで、人はFIREを達成出来ます。
この3つを分類して行くと
ハスラー
起業家、経営者
起業家や経営者は事業を起こすことで収入を増やし、FIREを達成させます。
主にスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツなど起業家はここに入ります。
投資
投資家
投資家はお金からお金を増やすのが得意で、インデックス投資における7%など笑いものでしかない。
年利20%などが当たり前!
ウォーレン・バフェット
オプティマイザー
倹約家
オプティマイザーはそこそこの給与を貰い、執拗に出費を抑え財産を築く人です。
資産管理を徹底して行い、自分の資金は1円たりとも管理しないと気がすまない。
ただし臆病で暴落などの損失が出た場合は気が気では無くなってしまう人。
このどれかになることで、FIREを達成できる。無理に起業したり、倹約家したりする必要はない。
自分にあったものを見つけてそれを達成させればFIREは出来る。
中でもオプティマイザーはほか2つと比べると再現性が高いのが特徴である。
といった内容でした。
私はFIREを達成させるには絶対収入を増やす必要があり、それには起業しかない。
そう思っていました。
ですが、起業というハードルの高さにどうすれば良いのか立ちすくんでしまっていました。
そんな中本書では、倹約家でもFIREを達成出来る!と訴え、そして著者自身が倹約でFIREを達成した人です。
この事はビジネスを起こすしか経済的自由になれないと思っていた私の視野を広げてくれました。
勿論起業家になってさらに倹約出来ればもっと良いでしょうが、それしか方法が無い。というわけでもない。
という新たな見地が広がった気がします。
【FIRE 最強の早期リタイア術 感想】 まとめ
思ったよりも勉強になった本でした。
特にインデックス投資の出口戦略と、FIREを達成出来る人の3つの特徴については良い気付きを与えてくれました。
現状収入は多くない私ですが、子供の頃からずーっと貧乏マインドはあるつもりです。
オプティマイザーで行きつつ、収入を増やし、早期FIRE目指して今後も資産運用頑張っていきますよ!
私はこの本によって投資スタイルを少し変更していくこととしました。
FIREを目指している人には何かしら参考になるかと思います。
是非一読をオススメいたします!
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